読書感想1:ルポ児童相談所―一時保護所から考える子供支援(慎 泰俊)
読書感想:ルポ児童相談所―一時保護所から考える子供支援(慎 泰俊)
著者が数多くの取材や養護施設出身者との交流を通して感じた、
一時保護所(児童相談所に保護された児童が一時的に生活する場所)
の問題点を指摘し、その解決策を提示する本。
<感じたことの羅列>
・誰からも必要とされない、受け入れられない少年。。。
親に育児放棄され、児童養護施設に入所したものの、施設内で暴力事件と性加害を
起こしてしまった少年は、一時保護所に戻ってきた。その後の彼の行先を検討するが
他の養護施設も里親家庭も受け入れる意思がないという例が紹介されていました。
文字通り誰からも必要とされない少年の境遇に胸が痛くなりました。
彼が問題を起こしてしまうのは、誰からも愛を受けられなかったから。
無責任な大人のせい。彼は生涯この社会を恨み続けると思います。
・ひとり親家庭の子供の貧困率は、OECD加盟国(35か国)の中でワースト一位
ワースト一位という事実に驚きました。日本ではシングルマザーが働き口を探すのが難しく、年収も低くなっているようです。こういった家庭では子供の教育に十分なお金をかけることも難しいと思います。何の不自由もなく塾に通わせてもらい、留学まで行かせてもらった自分は本当に恵まれている。学歴はその人の努力をうつしだすものだと思っていましたが、そもそも十分な教育を受ける機会さえもない人がいるのだと改めて思い知らされました。今、個別指導塾で講師のバイトをしているですが、児童養護施設の子供たち向けの学習支援ボランティアをして、少しでも力になりたいという気持ちがわきます。ただ、就職するまでの短期間のボランティアは子供たちに「あの人も自分たちから離れていくんだ」という感情を抱かせてしまいそうで、そのあたりはどうなのかを確認しなければと思います。
※貧困率は所得の中央値の半分
・日本政府による教育向け支出はOECD各国で最低水準
子供の貧困率は、政府の家族向け支出や教育向け支出の大きさと相関しているそうですが、日本は教育向け支出も、家族向け支出も非常に低い水準のようです。
少子高齢化が進み、高齢者向け支出が増える中で、子供向け支出を拡大するのは難しいのでしょう。第一、最近祖母と話している際に、高齢者もかなり生活が苦しくなっているようです。実際、祖母の知人の老夫婦は月8万ほどの年金で暮らしているそうで、家財なども手放したり新聞の購読を辞めたりしているそうです。
このような事実を知る中で、日本社会に対する危機感が大きくなってきました。
日本の一人当たりGDPの順位はいまや20位前後、人口減少による国内経済の縮小、
高齢化による社会保障費の拡大、また機械学習や深層学習などのテクノロジーによって
失業する人が増え格差が増大するおそれ、格差が増大すれば相対的貧困者の比率が高まり、満足に教育が受けられない子供が増える、でも子供向け支出は増やせない。。。
このままでは日本はやばいんじゃないか。。
4月から社会人になる自分もこの国のために何か貢献したいです。
起業して会社を成長させ税金を納め雇用を創出する、経営コンサル会社に就職するのでコンサルタントとして日本企業の成長に貢献する、地方出身なので特に地方の中小企業の成長にも貢献したい、NPOに参加して直接社会問題の解決に取り組むこともできるでしょう。すごい人間じゃないけど何かできるはずだと信じて、頑張ります。
とまあ、この本の主題より、細部のデータに目が留まってしまい、本の魅力を伝える記事にはなっていませんが、とてもいい本でした。